あたしは、人見知りをする。
これは誰にも話したことはないし、言っても信じてくれないだろう。
「初対面の相手にも体当たり」だとか、「知らない人についてっちゃダメ」とか、よく言われる。
でも、あたしは内心、びくびくしている。
女学生「おはよー、詩歩」
詩歩「はいはーい、おっはよ〜ん」
誰も自分のことをわかってくれない。
ドラマとか映画とか小説とか、現実の事件でもそういうセリフを耳にするのはしょっちゅうだ。贅沢な悩みを抱える、登場人物達。
あたしは、他の人ことがわからない。何一つ。だから、怖い。
怖いから、恐る恐る足を踏み出す。様子を見ながら少しずつ少しずつ。
怖いから、壁の寸前まで踏み込みたい。でも、あたしは圧力に潰されてしまう。怖くて怖くて、そこから前に進めなくなる。だから、笑う。
詩歩「へらへらへら…」
怖いから、笑うしかない。どうしてみんなは平気なんだろう?
でも…変な人が一人いた。
「ちょっと大きめの穴だなぁ…」最初は、それだけだったのに。
ちょっと、足を踏み込んでみる。まだ先がある。
さらに、ちょこっと。まだまだずっと、先は続いている。
思い切って、1歩2歩3歩。突き当たりはまだ見えない。
ちょっと図に乗って、走ってみた。
詩歩「わぁーっ!!」
叫びながら。
タカタカタカ…。行っても行っても、壁なんかない。
ものすごく広くって、いくら足跡をつけてもキリがない。
嬉しくなって、踊っちゃう。大きな大きな、空洞に抱かれて。
あんまりなんにもないから、あたしも裸になりたくなった。
心も体も、あたしも見たことがない、中身も。
何もかもさらけ出して…そして、見て欲しい。
胸を開いて、東吾ちゃんの手にのせたい。
詩歩「はい。これ、あたしの心臓です」
とっくんとっくん。動いてる。
詩歩「これは胃袋です。まだ、朝食がはいってるみたいですねぇ」
ゆさゆさ、ちゃっぷん
詩歩「あっ、ごめーん、胃液が垂れちゃったよ」
あたしの中の、聞いたことないような臓器がデロデロと出てくる。
床一杯にぶちまけた、あたしの中身。
(東吾ちゃんは、一緒に拾ってくれるだろうか…?)