「エム MxS エス」
2003年アボガドパワーズより発売のハートフルSM恋愛アドベンチャー?


特にSMが好きと言うわけでは無いのですが、なんとなくやってしまったこのソフト…
アボガドパワーズと言えばPC98時代から名作を作り続けているメーカーで、
「つもバカ日誌」や、「黒の断章」等に始まり、「終末の過ごし方」や、「D+VINE[luv]」等を制作しております。

「エム MxS エス」はスタッフで言えば「終末の過ごし方」と同じスタッフによる作品で、
魅力あるシナリオ、雰囲気の良い絵、印象深い音楽を持つ良い作品でした。


それでは「エム MxS エス」のあらすじから。

とあるSMクラブ「Combat de Reines」での出来事。
スタッフの引き抜きによって、苦しい経営状態になってしまった最中、
クリスマスまでに経営再建の見通しを立てなければならない。
今のスタッフでは到底無理な事であった。
そこで新人を二人迎え、クリスマスまでになんとかしよう!
と、そんな感じのストーリーです。

主人公はまだバイト仕立てのホールスタッフで、店長にこき使われながらも、
何とか店で働く女のコのご機嫌を取りながら、経営再建を目指します。
続いて店の女のコ。

●真境名 そあら(ミストレス(女王))
新人の女のコ、素直で普通の女のコ。

●芽河原 かさね(スレイブ(奴隷))
自称ロボッ娘、語尾に〜ロボを付ける変わった女のコ。

●小鳥遊 はずむ(スレイブ)
勝気な性格のロリータスレイブ。

●中沢 のどか(ミストレス)
おっとりした性格のお姉様。

●黛 いほこ(スレイブ)
メガネのドジッ娘。鬼太郎カットの髪型がチャームポイント。

まぁあと一人中盤から出てくる女のコもいます。

全体を通してシナリオはギャグを含んだほのぼのな話で、
シリアスな局面もあるものの、巧く明るく見せていました。
ゲーム的に店の経営がメインとなるので、それぞれの女のコの個別のシナリオは決して濃いものではありませんでしたが、個性が巧く出ていて、満足の行く内容だったと思います。
特に「かさね」の性格がとても良く、私のツボにはいりました。

「終末の過ごし方」に比べると似ても似つかないくらいに、明るいシナリオですが、
これはこれでとても良い雰囲気が出ていたので素晴らしいと思いました。
また、「SM」を題材とした物語である事もアボガドパワーズとしては特殊であり、
あまり「SM特有」の「痛さ」等は感じられず、ほのぼのした雰囲気だったのに好感が持てました。
敢えて「SM」を題材とした事、それでいて巧くまとまっているところにライターさんの巧さを感じました。


続いてグラフィック。

原画は「小池定路」によるもので、その独特の雰囲気と絵の可愛らしさは尊敬に値します。
「終末の過ごし方」では儚い女のコをとても巧く描いていましたが、今回は一風変わってSM嬢。
どんな雰囲気に仕上がっているのか少しドキドキでしたが、少し儚さを含んだ明朗活発な女性を巧く表現していて、とても素晴らしいと思いました。
今回はディフォルメ等も多用していて、絵を見ているだけなのに、笑いが浮かんで来たりと感情が動かされるのが心地の良かったです。
また、オープニングムービーもかなり気合が入っていて、アニメーション自体はしないのですが、
ムービーだけの為に書き下ろしてある絵が幾つもあるのには脱帽でした。

キャラクターの個性表現も良く、目の眼球を真っ黒に染めてしまっている独特の絵柄がツボに入りました。
またその中でも「かさね」のデザインは個人的にとても良く、シナリオとともにかなり入れ込みました。
口がディフォルメ上で△で表現されていたり、前髪揃えだったり、色々…とにかく良かったです。


続いてシステム。

SMクラブの経営再建をすると言うのがこのゲームの目的であるのですが、
大抵数字を扱ったADVは面倒に思う事が多く、少しこのゲームもそう言った点で気にはなっていたのですが、
このゲームの素晴らしいところは、その数字を扱ったADVを飽きさせずに面白くプレイ出来たところです。

経営方針を決め、女のコのストレスなどに気を付けながらゲームを進めていくのですが、
経営中のゲーム進行もストレスを感じさせる事無くスムーズで、
なんとなく感覚でクリア出来る難易度も好感が持てました。

また、このゲーム自体のメッセージウィンドウや、小さなアニメーション等のセンスが良く、
一つ一つの動作に爽快感が持てたのがこのゲームの良き所であると思います。
右クリックで画面効果等を高速化出来るのも良かった点です。


続いて音楽。

軽快なリズムで「終末」とはまた違った雰囲気でした。
特にアイキャッチ音楽が好きでした。

ゲーム自体も面白く、音楽も良かったので、是非サントラが欲しかったのですが、
アボガドパワーズのHP上では通販は現在中止らしく…かなり残念です。


全体を通して、

SMと言うジャンルはエロゲーではそう珍しくもないものの、
アボガドパワーズの雰囲気とは一風違ったこのソフトですが、
アボガドパワースの独特の雰囲気がSMと言う行為を面白く表現していて、
とても好感の持てる面白いゲームだったと思います。
シナリオ、絵、サウンド、システム、どれを取っても粗がなく、
SMと言うジャンルに抵抗が無ければ是非お勧めの一本であると言えます。
是非、声があるとよりキャラクターに愛着が湧いて良かったような気もしますが、
声が無い分ゲーム自体の容量が少なめでおまけ要素が沢山ゲームCDに入っていたので、
これはこれで嬉しかったです。

最後に一言、このゲーム関係で一番印象に残った言葉。
「ロボは玉ネギ嫌いですロボ〜」
(ゲーム内の言葉ではないですけど…)


2004 04/08


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