●ねがぽじ〜お兄ちゃんと呼ばないでっ!
2001年「Active」より発売のADVゲーム


これも「鬱ゲー」として紹介されていたので、どうしてもやってみたくてプレイしたのですが、
何と言うか…見解次第ではとても「鬱」にも「切ない」にも「ほのぼの」にも取れるゲームです。
私の初プレイでは、鬱的要素はあるものの「ほのぼの」したエンドで締めくくられていると思っていました。
しかし、私は気に入ったシナリオのゲームは何度もプレイしてしまう性格なので、
このゲームも何度かシナリオを読み返していたのですが、
このゲームこそ「鬱」であると、なんとなく感じてしまいました。
メインシナリオの最後の締めくくりが明確な表現でないために、
「ほのかな希望」ともとれるシナリオが「どうしようもなく切ない絶望」にすら変わってしまいます。
しかし読み返せば読み返すほど…「どうしようもなく切ない絶望」の方に感じてしまうので、
やはりこのゲームは「鬱」なのだ、と思いました。

メーカーである「Active」と言えば、PC98時代からの老舗で、
「くすり指の教科書」や、「学園ボンバー」等など私の青春を支えた作品を
幾つもリリースしているメーカーです。

とは言え、windowsになってからは「バイブルブラック」くらいしかやった事がなく、
「風上旬」氏からも遠ざかっていたのですが、この度もう一度触れる機会が来た事を、
大変嬉しく思って、この「ねがぽじ」をプレイしました。

では「ねがぽじ」のあらすじ等。
舞台は学園モノ。
ちょっとマヌケで、胸の小さい女生徒「まひる」
しかし周りの誰も、本人すらも気が付かなかった事実が発覚する事になる。
実は「まひる」は男の子だったのだ。
そんなプロローグと共にこのゲームは展開します。

始めに「鬱ゲー」と聞いていた割には、随分おちゃらけた始まりだなーと、
少し拍子抜けしていたものの、そこからの展開に巧いシナリオの見せ方を感じました。
ギャグ主体で語られるシナリオの中に垣間見えるシリアスな文章。
逆に明るさすらが儚く見えてくる、そんな感じを持たせるシナリオでした。
「実は男だったまひる」に対する、今まで友達だったクラスメートからの罵声。
しかしまひるはその底抜けの明るさで、そんな事一つも気にしていないように生活する。
そんな生活の中で時々文章に表れる「まひる」の本当の気持ちが、
ギャグを主体とした作品をシリアス作品に変える大変重要な役割を果たしていました。

で、まぁ一応恋愛主体なゲームなので、主人公である「まひる」は
最終的に女性キャラとくっ付く訳なのですが、
そこで私が一番惹かれたキャラクターが「桜庭香澄」と言うキャラでした。

「香澄」は才色兼備、文武両道のお嬢様、しかしどこか冷たい印象を持った女の子です。
しかし「まひる」と過ごす事で、彼女は救われてきた。
「まひる」が男だとわかっても、彼女は「まひる」を見捨てるような事はせず、
逆に「まひる」を守ってくれます。
いつだって「まひる」に救われてきたのが自分である事を知っているから…

そんなわけで、「香澄」にはバッドエンド、トゥルーエンドと二つあるのですが、
バッドエンドの方が明らかに幸せでした。
話的には、両方とも「香澄」視点で進んでいくのですが、
バッドエンド方面のシナリオでは、香澄とまひるの出会い的なシナリオから始まり、
学園生活でのイベントがあり、最後に一騒動ありと、
比較的普通の恋愛ゲーム的なシナリオで締めくくられています。
一応エンド付けこそ「バッドエンド」となっているものの、
こちらの方は普通に幸せなエンドと思った方が良いでしょう。
そう、何故バッドエンドの方が幸せに見えるかと言うと、
メインのトゥルーエンドがどうしようもなく救われないからです。
これはシナリオの技法が悪いとか言う意味ではなく、
この物語にのめりこんでいけば行くほど、
「救われない」と言う気持ちがふつふつと沸いてくるからです。
しかし最後のアレは…
是非誰かプレイしたら感想を聞かせて欲しいと思います。
私としては、確かに綺麗な終わりとも感じるし、
逆にこの後の展開が気になるモノでもある…
しかし想像しても先は見えてこないので、これはこれで終わるしかなかったのだなと。
「鬱」要素はかなり高いと言えます。


話は変わりますが他のキャラも良い味を出していました。
特に「透」と言うキャラがとても好きになれるキャラだったと思います。
このキャラにエンディングがないのがとても残念でした。
まぁ男同士になってしまうので倫理的には少しヤバいんですけどね。
とは言え、その後にプレイした「ねがぽじファンディスク」のおまけシナリオや、
風上氏の同人誌上ではやっちゃってました。
んーでも「まひる」を最後まで女性として捕らえていた私には、
これが一番しっくりする気がするのですが…「透×まひる」が。
ちょっと言い訳をさせていただくと、
まひるは男ではないのですよ…多分天使と言う種族には性別がないので、
デフォルトが男の体であっても明確には性別と言うものはないのではないかと。
実際胸も膨らんでたし…風上氏の絵だからかもしれないけど。
でまぁ、よく他のメディアなんかでは、「女の子として育てられたけど実は男」とか言うのがあるけど、
あれには全然ピンと来ません。むしろ気持ち悪いくらいです。
と言うわけで、まひる万歳と。

次にCG。
久々に「風上旬」氏の絵に触れたわけですが、
はまっちゃいました。
もう、どっぷりと。
昔はそんなに巧い絵描きだとは認識していなかったのですが、
可愛いその絵柄に惹きこまれているのは事実です。
他は、背景も申し分なく、着色も綺麗なものでした。
アクティブといえば着色がはみ出していたりと少し雑なイメージがあったりしたのですが、
もうそんな時代は終っていたようです。
文句の付け様は特にありませんでした。


続いて音楽。
音源を確かめたわけではないけれど、MIDIっぽかったです。
ダイレクトサウンドでMIDIを鳴らしていたのかな。
安っぽさは感じられました。
しかしシーンごとの音楽の割り振りなどはしっかりしていて、
まぁ特に凄く気になったと言う事はありませんでした。


システムですが、まぁ特に辺り障りのないADVゲーム的機能でした。
まぁ普通にメッセージスキップもあるし、回想モードもあるし、
悪い所はなかったと思います。
ここは流石Activeと言った所です。


全体を通して、「鬱ゲー」と言うのはこう言うゲームなのかなと、思いました。
メインシナリオ以外は特に普通の恋愛ゲームにスパイスが降り掛けられた位なのですが、
メインシナリオはラストシーンを読めば読むほど「切なく」なります。
例えるならばKEY社の「AIR」での「ゴール…」のシーンも切なさはありましたが、
このゲームの切なさは「アレ+やるせなさや+救われない」と言った要素が含まれます。
まぁそれをひっくるめた感情がプレイ後にくる、
「もどかしい気持ちとか、やるせない気持ちとか、脱力感」→「鬱」と言う感情なのでしょう。
と私は信じる事にしました。

また普通のシナリオの方でも少し変わった観点からシリアスを見せてくれるのが心地よく、
所々はいるギャグでもその一つ一つにオチを付け笑わせてくれます。
その中にシナリオライターさんの独特の世界が感じられました。
「枕流」氏のシナリオ作品はまだコレしかやった事がないので、
これからチェックして色々勉強させていただきたいと思います。
総評として、ギャグとしても、シリアスモノとしてもこのゲームは素晴らしい出来でした。


2004 02/01


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