「さよなら。」
ぱんだはうすから発売のADV


ぱんだはうすは新体操(仮)の絵柄の雰囲気に惹かれて以来、娘3動物園や、
原画家は違うものの「DUO」等、結構プレイしています。

そこで、ぱんだはうすの10周年作品ともなるこの「さよなら。」ですが、
やはり名前の響きと黄昏時といった要素に惹かれました。
もの悲しい雰囲気を誘うこのソフトですが、
今までのぱんだはうすのソフトは結構明るめのモノが多く、
どんな仕上がりになっているのか少し興味的ではあったのですが、
このゲームでは設定の巧さに感心しました。

ではこのゲームのあらすじ。

20歳になった人は死んでしまう…
そんな世界での出来事。
子供は生まれない、人は死ぬ…世界から人間の影は急速に減少する。
もう人とは2年間会っていない…
そんな世界ではこんな挨拶が流行った。
「誕生日はいつ?」
20歳の誕生日を迎えたものはその日をもって死に至る。
主人公が誕生日を迎えるのは3月31日。
主人公に訪れる春夏秋冬の人との出会い。
出会いは別れを生む。
主人公はいくつもの「さよなら。」をしなければならない。

よく、世界で一人になる。とかそんな類のシナリオは目にしますが、
そう言ったシナリオは大好きなので、この設定は好感が持てました。
それと、巧く「さよなら。」と言う別れの言葉を表現するシナリオで、
どうなるのかとわくわくさせるシナリオでした。

春、夏、秋、冬とそれぞれで少女に出会い、それぞれ別れを迎えるのですが、
オムニバス感覚で、そこに一定の繋がりが見えるのが心地よく、
主人公に訪れる寂しさや悲しさが巧く表現されていました。
個人的な好みをもっと追求すれば、主人公が一人称であって、
もっと感情を出してくれると物語に引き込まれやすかったかな…

しかし季節感をともなったシナリオはとても情緒深く、
表現やシナリオの流れ、とても良い雰囲気を出していたと思います。

ただ、始めの方の臨場感や悲壮感から比べると、後々になればなる程、
主人公の影が薄くなっていって、エンディングでは肩透かしにあった気もしなくはなく、
巧くまとまってはいるものの、まとめ過ぎかなとも思えなくもなかったです。


絵は新体操(仮)で好評を得たさとう氏で、愛着の湧くキャラクターでした。
また絵の見せ方が結構凝っていて、それも良好です。
背景も特殊な感じで、面白かったです。
気になったところは、色の塗り方が、わざとそう言う塗り方なのかは解かりませんが、
明らかに身体の途中からパレットが違かったことかな…
あと、屋上から飛び降りる少女の絵がフェンスに対して大きすぎて、なんか違和感を感じた事。
特にそのシーンは私個人の好みとしてとても好きなシチュエーションであったので、
ちょっと残念でした。


システムは特に悪いところもなく、快適に動きました。
シナリオの流れる位置や、絵の表示される位置などの凝ったものが多く、
オリジナリティを出していたと思います。
また、シーン回想、メッセージスキップ等欲しい機能は全てありました。
ただ、Hシーンで画面が動いたりするのはちょっといまいちだったかな。


続いて音楽は、ピアノを主体とした綺麗なメロディなど、
シナリオに臨場感を持たせる良い役割を果たしていたと思います。
また主題歌である「さよなら。」も綺麗な曲でした。
ぱんだはうすのHPからDL可能なので聴いてみてはいかがでしょう。


全体を通して、優れた作品ではあると思いました。
気になる点も多かったのですが、設定等根本的な所ではかなり良かったと思います。
「さよなら。」夕暮れ時、悲しい別れ…
そう言った雰囲気の好きな人には是非お勧めです。


2004 03/15


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