●世界ノ全テ
2002年「たまソフト」より発売のADV


評判の良さと、独特なタイトル名から発せられる雰囲気に惹かれこのゲームをやりました。
タイトル名から勝手に推測して、電波の入ったサイケなADVで楽しませてくれるのかと思いきや、
結構純粋なADVでちょっともの足りない感もあったのですが、
ADVとしての完成度等は通常のADVからは群を抜いて素晴らしいと感じました。

ちなみにプレイしたのはリメイク前のモノで、リメイク後の-remind of youもやってみたい所ではあるのですが、
リメイク前のもので十分堪能出来たので、多分プレイすることは近いうちには無いと思います。

ではあらすじから、

8年ぶりに主人公が帰ってきた故郷、
そこで出会う昔の旧友。
世間に反抗しながら生きてきた主人公だったが、
次第に心を開いていく。
いつしか「軽音部」を通して「仲間」と言うモノを得る。
恋と友情の入り混じった心地の良い青さを感じさせるADVです。

シナリオを通して思ったことは、上記にも書いた通りタイトルの割には正統派なADVでした。
バンドを通して青春を語るところ等はとても「カナリア」と言うゲームに似ていると感じましたが、
こちらの方がモノ悲しいところが多く、切ない仕上がりになっていました。

基本的に攻略できる女の子は4人で、
小西智子(キーボード、作曲担当、主人公と似た雰囲気を持つ転校生)
櫻井まりも(ベース担当、主人公を慕う元気娘)
草薙ほのか(マネージャー、大人しい感じの眼鏡の先輩)
草薙かすみ(軽音部顧問、主人公の担任でもある)
となっています。
それぞれのキャラクターに魅力があり、攻略途中でも選択肢での拒絶が良心を咎めて仕方ありませんでした。
ではそれぞれのシナリオについて、

小西智子はこのゲームでのメインヒロインであり、全てのシナリオで大事な役目を果たします。
私はこのキャラがとてもツボにはいっていたので、真っ先にクリアしました。
主人公の一週間前に転校してきた少女、
屋上で景色を見つめながら物憂げな表情を見せる。
シナリオの展開的には、事件がどんどん覆い重なるように起き、
その度に見せられる主人公とのラブラブっぷりには見てて微笑ましいものがありました。
切なさや若いが故の弱さがとても良く感じられるこのシナリオは、
メインヒロインの名に恥じないとても良い出来でした。
またエンディングも私にはとても心地よく感じられ、
よくあるパターンといえばそうなんですが、後味の良い仕上がりだったと思います。

櫻井まりも、ならびに草薙ほのかのシナリオは、
二つとも良く似ていたと言う感想を持ちました。
それぞれキャラクターの魅力は十分に引き出せていたので、特に不満はありませんでしたが、
草薙ほのかのシナリオでは所々に矛盾点があったのが少し残念でした。
バンドの文化祭でのライブがほのかのシナリオでは行われなかったはずなのに、
何故かシナリオの流れが進んでいくと、ライブが行った事になっていたりと、
ライブの回想シーンで感動を呼ぶシーンもあっただけにすこし残念に感じました。

草薙かすみのシナリオだけは全然別物扱いとなっていて、
一応ほのかのシナリオからの分岐になるものの、
こちらはメインヒロインである智子の事はほとんど語られることは無く、
かすみとその妹であるほのかの思いのすれ違いがメインとなって語られていました。
教師である「かすみ」と生徒である主人公の禁断の恋なわけですが、
このゲームで一番青臭さを感じたシナリオでもありました。
しかし心地は悪くなく、結構面白くプレイ出来たと思います。

このゲームにはあともう一人サブキャラの女の子がいるのですが、
そちらのほうにエンディングが無いのが少し残念でした。
リメイク版にあるのなら、それだけのために買ってやりたいくらいです。
キャラクターも良い感じでしたし、サブキャラとメインキャラの中間見たいな扱いで、
結局エンディングはないのか、と落胆しました。

シナリオで一番良く感じられたシーンが、
ヒロインの智子を家から軽音部の皆で力を合わせて連れ出して、
ビルの地下に潜伏すると言うシーンなのですが、
とても青春を感じさせる良い緊張感や臨場感を味わえて良かったと思います。


次に絵について。
キャラクターの魅力は言うこと無しで、個性もしっかり出せています。
胸でかすぎちゃうかー?とか思うシーンもありましたが、それはそれで。
背景も描き込まれているし、キャラクターの表情パターンも多く、
細かく作られていることに感服しました。
塗りも申し分無く塗れていて、特に不満はありませんでした。
またムービーも結構PCゲームのOPにしては動いていたので感動しました。
特にOPで、智子が実写の町をバックに歩いている何気ないシーンがツボでした。


次に音楽について、
このゲームのシナリオを助ける役割として、
その場その場での臨場感を伝える音楽が大きな役割を果たしていました。
また、このゲームにほとほと感服してしまうのが、ボーカル曲です。
多少荒削りな感もあるのですが、主題歌である「未完成の城」はとても良い曲だと思いました。
特にバイオリンの音が心地よく響いていたと思います。


次にシステムについて、
ADVゲームとして必要な要素は殆どそろっていました。
回想モードが無かったのが少し残念だったかな。
しかし、メッセージウィンドウの中にあるボタン等はコンパクトに巧くまとめられていて、
セーブ個所も満足行く数でしたし、セーブロードの速さにも好感が持てました。


全体を通して、
純粋に楽しめるADVとしてはかなりの完成度を誇る作品であると思いました。
少々ストレート過ぎる感もありましたが、このゲームはどんな人にでも進められる作品であると思います。
特にあまりADVをやった事の無い人には良いきっかけになるゲームかもしれません。
エロ度も、シリアス度も非の打ち所は特に無く、
面白くプレイできるゲームだったと思います。
「たまソフト」のゲームをプレイしたのは始めてでしたが、
次回作「LOST CHILD」も面白そうなので機会があればやってみたいと思います。


2004 02/13


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